主な対象疾患

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循環器内科では、不整脈・虚血性心疾患・心筋症・弁膜症・心不全・大動脈疾患・肺動脈疾患・末梢動脈疾患・高血圧・失神など循環器疾患全般を対象とします。不整脈は徐脈性不整脈・頻脈性不整脈・期外収縮に大別されますが、対象となる不整脈を迅速に診断し、薬物療法または非薬物療法を的確に行います。狭心症、心筋梗塞等の虚血性心疾患に対しては、心臓カテーテル検査を積極的に行い、適応症例には経皮的冠動脈形成術を施行します。虚血性心疾患急性期および急性心不全に対しても、CCUを完備し常時対応します。拡張型心筋症、肥大型心筋症などの心筋疾患に対しては病態に応じた治療を、心臓弁膜症に対しては心臓外科と協力しながら治療を進めていきます。心不全は薬物療法が基本ですが、非薬物療法の可能性も検討します。

最新のフィリップス社製の心臓カテーテルシステム

最新のフィリップス社製の
心臓カテーテルシステム

最新の3D-Mapping Systemを使った心房細動焼灼術

最新の3D-Mapping Systemを使った心房細動焼灼術

最新技術を用いた心房細動アブレーション治療について

心房細動について

1) 心房細動とは

心臓には4つの部屋(右心房,右心室,左心房,左心室)があり、それぞれが収縮と拡張をくり返しています。しかし、それぞれの部屋がバラバラに動いているとポンプの効率が悪くなってしまいます。そのため、心臓には規則正しく効率よく動くためのシステムが備わっています。右心房にある洞結節から心臓を動かすための命令(電気信号)が1分間に60-80回程度規則正しく出され、それが心房を通り、房室結節を経由して速やかに心室に伝わることによって心臓がポンプの役目を果たします。心房細動とは、そのうちの心房という部屋が小刻みに震え、不規則に拍動する不整脈の一種です。心房細動になると、洞結節以外で発生した異常な電気信号により心房は無秩序な状態になり、その電気信号が不規則に房室結節を経由して心室に伝わるため、脈はバラバラになります。

心房細動とは
心房細動とは

2) 心房細動の発生率 (有病率)

心房細動は日本人口の0.6% (発作性の人を含めると日本国内の患者数は100万人を超える)にみられ、「最もありふれた不整脈」だと言われています。加齢とともに増加し、80歳以上では20人に1人の割合で起こります。中には全く心臓病のない若い方にも起こることもあります。また、高血圧,糖尿病,冠動脈疾患,心不全,心臓弁膜症,呼吸器疾患,甲状腺機能障害などは、心房細動を引き起こす可能性のある疾患として知られています。

3) 心房細動の症状

心房細動が起こると脈拍は不規則になり、通常より早くなることが多く、動悸や息切れを感じます。また脈拍が早い状態が長く続くと心臓に負担がかかり、心不全に陥ることもあります。心房細動自体では直接生命にかかわることはありませんが、脳梗塞や心不全を引き起こすこともあるので放置できない不整脈です。

心房細動の症状

4) 心房細動と脳梗塞の関係

心房細動が起こると、心房内から血液がうまく送り出されなくなり、血液の「よどみ」が生じ、血栓(血液のかたまり)ができやすくなります。この血栓が血流にのって脳にまで運ばれ、脳の血管を塞いでしまうのが脳梗塞です。心房細動によってできる血栓は、他の原因でできる血栓よりも大きいことが知られています。そのため、心房細動が原因で起こる脳梗塞(心原性脳塞栓症)は他の脳梗塞よりも病態が深刻です。後遺症が残ったり、死に至ったりするケースも多く、社会復帰できる確率は約50%と報告されています。

心房細動と脳梗塞の関係

心房細動の患者さんが脳梗塞を発症するリスクを評価する指標として「CHADS2 (チャズツー)」スコアがあります。項目に当てはまると点数が加算され、合計点が高いほど脳梗塞の発症リスクが高くなります。スコアが0 点でも脳梗塞を発症するリスクはゼロではありません。

心房細動と脳梗塞の関係

5) 心房細動と心不全の関係

心房細動になると心臓全体に負担がかかるため、心臓のポンプとしての機能が低下してしまう「心不全」の原因にもなります。

《頻脈誘発性心筋症による心不全》:もともと心不全症状がない場合でも、心房細動になり頻脈になってしまうと、頻脈誘発性心筋症という病気になり、結果的に急性心不全になることがあります。特に高血圧により左心室が通常よりも肥大している方や肥大型心筋症と診断された患者さんに多く見られます。

心房細動は、早期に適切な治療を行うことで、脳梗塞発症のリスク軽減や根治を目指すことを期待できます。また、心不全患者さんの場合は、心房細動が増悪の一因となっている場合には、心房細動 そのものを治療することで、心不全患者さんの予後が良好になる可能性があります。
カテーテルアブレーションによる治療を受けた重症心不全患者さんは、薬物療法だけの患者さんよりも、死亡する割合または心不全の増悪で入院する割合が低いことが報告されています。

アブレーション治療について

1) 心房細動に対するカテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術)について

心房細動の約90%は(左右,上下) 4本の肺静脈から発生する複数の心房性期外収縮が左心室に伝播することで発生します。心房細動に対するカテーテルアブレーションは、この心房性期外収縮が左心室に伝播するのを防ぐことを目標に行われており、「肺静脈隔離術」と呼ばれます。隔離の方法については、未だ完全に確立されておらず施設間でも異なりますが、一般的に一回のアブレーションでの成功率は60~80%が現状であり、再発率が他の不整脈に比べると高いことから、複数回のアブレーションを行うこともありえます。現時点での心房細動のアブレーションは治療により心房細動が完全に消失することを究極の目標に、根治に至らずともその頻度や持続時間が減少し、患者様のQOLの改善が得られることを目標にした治療法です。

心房細動に対するカテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術)について

2) カテーテルアブレーションの種類

カテーテルアブレーションには、使用するエネルギー源や形状の違いによって、いくつか種類があります。まず、高周波電流を使って心房細動の原因発生部位を焼く方法と、冷却剤を使って原因発生部位を凍結させる方法、レーザー光を照射して原因発生部位を焼く方法があります。また、形状にも大きく2種類あり、先端に金属の電極がついた電極カテーテルや、先端に小さな風船がついたバルーンカテーテルがあります。

カテーテルアブレーションの種類

3) 高周波カテーテルアブレーションの方法

以下の手順で行いますが、検査および治療が終了するまでに3~5時間を要する可能性があります。

  1. ①局所麻酔下に、右足の付け根から(必要に応じて左側も) 3本のカテーテルを静脈(大腿静脈)に挿入し、また、左肩(左鎖骨下静脈)より1本のカテーテルを挿入し、透視下に心臓内へカテーテルを進めます。また、血圧を常時モニターするために足の付け根から動脈(大腿動脈)にカテーテルシースを挿入します。
  2. ②経心房中隔穿刺法により、右心房側から心房中隔に穿刺術を施行します。カテーテル型の細い針を心房中隔(右心房と左心房の間の壁)に当てて針より電気通電することで針を突き通し、カテーテルを2本 左心房に留置します。
  3. ③カテーテル留置後、肺静脈,左心房の画像構成および食道造影を行います。
    (その際にはバリウムを一回 口に含んでいただきます)
  4. ④各々の肺静脈領域(あるいは入口部付近)にカテーテルを置き、その先端から 20~50Wの高周波エネルギーを加えて15(~30)秒間の通電をくり返し行い、左心房内の心房細動の発生源とされる両側の肺静脈を隔離するように(取り囲むように)焼灼します。また、必要に応じて左心房内で線状に焼灼を行います。
  5. ⑤数十回の通電により各々の肺静脈~心房間の電気的隔離がなされたことを確認し、必要性があれば新たに焼灼ラインを追加します。また、心房粗動合併例に対しては、心房粗動の根治のために三尖弁輪~下大静脈間の線状焼灼を追加します。
  6. ⑥全てのカテーテルを体外へと抜去し、終了します。
  7. ⑦終了後は止血のために最低6時間の安静を要します。
高周波カテーテルアブレーションの方法

4) 冷凍バルーンアブレーションの方法

冷凍バルーンアブレーションは,すべての患者に行えるわけではありません。
以下に示すような方には行うことができません。

  1. ①心房の拡大がある
  2. ②肺静脈の形態異常(共通管など)を認める
  3. ③造影剤アレルギーがある

このため,手術前に造影CTを行い心臓の形を確認することが必要です。

冷凍バルーンアブレーションの方法

冷凍バルーンアブレーションは以下の手順で行います。検査および治療の時間は、2~3時間です。

  1. ①治療は鎮静した(寝ている)状態で行います。眠るための薬を点滴で投与した後、呼吸を補助するためのチューブを喉のところまで挿入します。さらに、食道の温度を測定する細い管を挿入します。
  2. ②右足の付け根(大腿静脈)から 2本のカテーテルを挿入し、また、左肩(左鎖骨下静脈)または右首(内頸静脈)より1本のカテーテルを挿入し、透視下に心臓内へとカテーテルを進めます。また、血圧を常時モニターするために足の付け根から動脈(大腿動脈)にカテーテルシースを挿入します。
  3. ③カテーテルを心臓内に配置後、心臓の形態を把握するための心臓造影検査を行う場合があります。
  4. ④経心房中隔穿刺法により、カテーテルを1本左心房に留置します。
  5. ⑤柔らかいワイヤーを治療する肺静脈にいれます。そのワイヤーをガイドにして、肺静脈の入り口に膨らませたバルーンをしっかり当てます。
  6. ⑥バルーンの先端から造影剤を注入しバルーンがしっかり静脈の壁に接していることを確認後、亜酸化窒素ガスをバルーン内に送り込み、-40~-50℃程度まで冷却し120~180秒間の冷凍焼灼を行います。
  7. ⑦心臓のすぐ横を走行している横隔神経への障害を予防するため,右肺静脈の焼灼時には弱い電気刺激を行います。麻酔で寝ていますので苦痛はありませんが,このとき,しゃっくりのような刺激をわずかに感じるかもしれません。
  8. ⑧一度の冷凍焼灼で不十分な場合は、くり返しバルーンで焼灼を行う場合もあります。時には高周波カテーテルで追加焼灼をおこなうこともあります
  9. ⑨全てのカテーテルを体外へ抜去し、終了します。終了後は止血のために最低6時間の安静を要します。
冷凍バルーンアブレーションの方法

5) レーザーバルーンアブレーションの方法

バルーンカテーテルを肺静脈入口部に密着させ、バルーンをふくらませることでその周囲の血液を排除し、レーザー光で心筋組織を焼灼します。内視鏡画像により心腔内を確認しながら、レーザーを正確に照射し円周上に焼灼することにより、有効性の高い肺静脈隔離術を行うことができます。また、焼灼部位毎にエネルギー量の調整が可能であることから、肺静脈狭窄や横隔神経麻痺などの合併症リスクの低減が期待されています。

以下の手順で行いますが、検査および治療が終了するまでに2~5時間を要する可能性があります。

  1. ①治療は鎮静した(寝ている)状態で行います。眠るための薬を点滴で投与した後、呼吸を補助するためのチューブを喉のところまで挿入します。さらに、食道の温度を測定する細い管を挿入します。
  2. ②右足の付け根(大腿静脈)から 2本のカテーテルを挿入し、また、左肩(左鎖骨下静脈)または右首(内頸静脈)より1本のカテーテルを挿入し、透視下に心臓内へとカテーテルを進めます。また、血圧を常時モニターするために足の付け根から動脈(大腿動脈)にカテーテルシースを挿入します。
  3. ③カテーテルを心臓内に配置後、心臓の形態を把握するための心臓造影検査を行う場合があります。
  4. ④経心房中隔穿刺法により、カテーテルを1本左心房に留置します。
  5. ⑤肺静脈の入り口に膨らませたレーザーバルーンカテーテルをしっかり当てます。
  6. ⑥波長980nmのレーザーで幅30度ずつ肺静脈の付け根を焼灼していきます。
  7. ⑦心臓のすぐ横を走行している横隔神経への障害を予防するため、右肺静脈の焼灼時には弱い電気刺激を行います。麻酔で寝ていますので苦痛はありませんが、このとき,しゃっくりのような刺激をわずかに感じるかもしれません
  8. ⑧時には高周波カテーテルで追加焼灼をおこなうこともあります。
  9. ⑨全てのカテーテルを体外へ抜去し、終了します。終了後は止血のために最低6時間の安静を要します。
レーザーバルーンアブレーションの方法

6). カテーテルアブレーションの効果・治療成績法

① 発作性心房細動アブレーション後の長期成績:
発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションの成功率は、近年、80%以上であることが報告されています。
② 持続性心房細動アブレーション後の長期成績:
1年以上持続している心房細動(慢性心房細動)では、発作性心房細動と比較して、アブレーション治療の成績は十分ではありません。再発率は複数回の治療でも1年で約3割,5年で5割程度です。心房が大きく拡大し、電気的に不安定な部分が多いためです。心房細動が2年以上持続していた場合は、さらに成績が落ちることが示されています。必要に応じて、抗不整脈薬を併用し、正常な脈を維持することもあります。

治療方針は、患者さんの持つ他の疾患や年齢などを考慮し、患者さんのご意向をふまえて決定されます。気になることは必ず担当医師にご相談ください。

  • 不整脈外来 火曜日午前・午後
    ※ご都合が付かない際はその他の曜日でも診察・相談可能です
  • 外来受診 予約受付 03-6204-6489
  • 医療連携室 03-6204-6000 代表

TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)について

大動脈弁狭窄症とは?

心臓は、全身に血液を送りだすポンプの働きをしています。大動脈弁は、心臓と大動脈の間にあり重要な役割をしています。加齢による退行性変化、動脈硬化、生まれつきの弁の形、リウマチなどが原因で、大動脈弁の動きが悪くなり、弁の面積がだんだんに狭くなる病気が大動脈弁狭窄症です。息切れ、呼吸困難、動悸、むくみ、胸痛、胸部不快、めまい、ふらつき、失神などの症状が出現します。

大動脈弁狭窄症とは?

症状出現後の生命予後は急激に悪化します。薬剤のみで経過観察した場合は突然死を含む短期的な死亡のリスクがあり一年間に20%以上の死亡率があります。大動脈弁狭窄症は進行性の病気です。そのため症状出現時あるいは心不全徴候、所見がある際には早急な治療が必要となります。治療により自覚症状、運動能力、生命予後の改善が得られます。

大動脈弁狭窄症とは?

大動脈弁狭窄症の検査

診断は主に心臓超音波検査で行います。これにより重症大動脈弁狭窄症と診断された場合に経カテーテル的大動脈弁留置術の適応の可能性があります。病態精査のため経食道心臓超音波検査も必要となります。経カテーテル的大動脈弁留置術の適応と判断された際には術前に造影剤を使ったCTが必須となります。これにより大動脈弁と冠動脈造影の位置関係、弁輪径、大動脈の走行、石灰化の分布、大腿動脈血管径などを把握します。この結果により経カテーテル的大動脈弁留置術のアプローチ部位を決定します。経カテーテル大動脈弁留置術には、経大腿動脈アプローチと、経心尖アプローチがあります。また心臓の栄養血管である冠動脈の精査のため冠動脈造影検査も必要です。高度の冠動脈病変を有する場合は冠動脈ステント留置術が必要となります。

大動脈弁狭窄症の治療

大動脈弁狭窄症の治療には大きく以下の3種類あります。

  • 外科的開胸による大動脈弁置換手術
  • 経カテーテル的大動脈弁留置術 TAVI
  • 薬剤またはバルーン拡張術

薬剤またはバルーン拡張術のみでは十分な生命予後が期待できないことが知られており、外科手術あるいは経カテーテル的大動脈弁留置術が望まれます。外科手術は開胸して、人工心肺下に人工弁に置換する手術です。長期成績が確立しており長年にわたり外科手術が第一選択とされてきました。しかし、その侵襲の大きさから重症にも関わらず約40%の方が手術を受けることが出来ませんでした。そのため経カテーテル的大動脈弁留置術が開発され高齢者や併存疾患がありリスクの高い方を中心に施行されるようになりました。その後経カテーテル的大動脈弁留置術の有効性が確立し、その適応が拡大されてきています。経カテーテル的大動脈弁留置術は、開胸することなくカテーテルを用いて新たな生体弁を植え込む新しい治療法です。大動脈弁狭窄症の病態、年齢、併存疾患、大動脈の走行・動脈径などを考慮し治療法を決める必要があります。当院ではカテーテル専門医、心臓エコー専門医、心臓外科専門医、麻酔科医などで結成したハートチームにより十分議論し治療方針を決定しています。

大動脈弁狭窄症の治療

経カテーテル的大動脈弁留置術は高難度新規医療に含まれます。この治療は昭和大学江東豊洲病院の審査を受け実施が承認されています。また、この治療の実施には経カテーテル的大動脈弁留置術関連学会協議会からの認可が必要です。当院は経カテーテル的大動脈弁留置術関連学会協議会が認めた実施施設です。

経カテーテル的大動脈弁留置術の実際

カテーテルを用いて人工弁を留置します。この手術には、足の付け根からアプローチする方法 (経大腿動脈アプローチ)と、左胸(心尖部)からアプローチする方法(経心尖アプローチ)があります。いずれのアプローチも、カテーテル透視装置が配備された手術室で、循環器内科、心臓血管外科、麻酔科がチームを組んで、治療に臨みます。治療は全身麻酔あるいは局所麻酔および静脈麻酔下で行い、治療時間は麻酔導入時間を含めて 3 時間から 4 時間程度です。

経カテーテル的大動脈弁留置術の実際

カテーテルを用いて人工弁を留置します。この手術には、足の付け根からアプローチする方法 (経大腿動脈アプローチ)と、左胸(心尖部)からアプローチする方法(経心尖アプローチ)があります。いずれのアプローチも、カテーテル透視装置が配備された手術室で、循環器内科、心臓血管外科、麻酔科がチームを組んで、治療に臨みます。治療は全身麻酔あるいは局所麻酔および静脈麻酔下で行い、治療時間は麻酔導入時間を含めて 3 時間から 4 時間程度です。

1 経大腿動脈アプローチ

足の付け根に小さな切開を加えて血管を穿刺(あるいは直接穿刺)し、大動脈にカテーテルを挿入します。 大動脈内にカテーテルを進め、狭くなった自己弁の位置に、人工弁を留置します。弁の留置の際には、抜去可能な一時的ペースメーカーを用います。弁の留置位置がずれないようにするためペースメーカーで心臓を一時的な頻拍状態にします。弁留置が終了したら、足の付け根の血管および皮膚を縫合あるいは特殊デバイスで止血して、問題が無ければ手術室で全身麻酔・人工呼吸器からの離脱を図ります。

2 経心尖アプローチ

足の血管が細い方や、胸腹部の血管の蛇行が高度な方に選択されます。左胸に 3〜5cm の小さな切開を加え、心臓の先端(心尖部)からカテーテルを挿入します。弁の留置方法は経大腿動脈アプローチと同様です。

3 その他のアプローチもあります。胸の真ん中やや上側から小さく切開してカテーテルを挿入する経大動脈アプローチや、肩の血管からアプローチする経鎖骨下動脈アプローチという方法があります。

ハートチームにより議論し上記アプローチを決めています。

この手術は開胸手術と比べると侵襲が小さく、早期に術後の体力回復を図ることが可能となります。よって重大な合併症がなければ術後翌日には早期退院に向けてリハビリを開始します。

経カテーテル的大動脈弁留置術はリスクを伴います。稀に生じる重大合併症に対しては緊急で人工心肺補助装置や大動脈バルーンパンピングという補助循環装置を留置したり、心膜ドレナージやステント留置術などのカテーテル手術、グラフト手術、開胸・開腹手術が必要となることがあります。ハートチームにより術前検討を慎重に行い重大合併症の発生率が最小限になるよう、また生じた際には早急で最良の処置が行えるよう努めています。

治療に関する相談

毎週水曜日午前中に弁膜症外来があります。また、ご都合が付かない際はその他の曜日でも診察・相談可能です。経カテーテル的大動脈弁留置術に関し不明な点や疑問点、あるいは心配な点がありましたら、いつでも担当医にご相談下さい。この治療は、通常の健康保険の範囲内で行われ、高額医療費制度が適応されます(その他の診察料や個々の内服薬の薬代、個室使用料などの費用は含まれません)。医療費の詳細につきましては医療事務職員にご相談ください。

  • 弁膜症外来 火曜日午前中
    ※ご都合が付かない際はその他の曜日でも診察・相談可能です
  • 外来受診 予約受付 03-6204-6489
  • 医療連携室 03-6204-6000 代表
日本メドトロニック(株)、エドワーズライフサイエンス(株)より画像提供

MitraClip(経皮的僧帽弁形成術)について

僧帽弁逆流症とは?

心臓は4つの部屋(左心房・左心室・右心房・右心室)から成り立っており、左心房と左心室の間には血液が逆流しないように2枚の膜で構成された僧帽弁という一方向弁がついています。僧帽弁逆流症とは、僧帽弁が閉じることができないために左心室から左心房へと血液が一部逆流してしまう状態です。弁を支える腱索や乳頭筋の断裂や延長などにより弁の逸脱(弁が飛び出してしまう状態)が原因になる一次性の場合と心筋梗塞や心房細動、心不全によって左心室が拡大することで、弁の閉まりが悪くなり、逆流が起こる二次性の場合があります。僧帽弁逆流の程度が大きければ、息切れや呼吸苦、むくみなどが自覚されるようになり、心臓が拡大して、さらにポンプとしての機能が低下して心不全に至ります。また、脳梗塞の原因となる心房細動などの不整脈を併発することもあります。

僧帽弁逆流症とは?

検査

多くは聴診で疑われ、診断は主に心臓超音波検査で行います。病態の精査のために経食道心臓超音波検査も必要となります。この検査は、喉に麻酔をかけた状態で行い、必要に応じて静脈麻酔を併用する場合があります。病状によっては、負荷エコー図検査(運動負荷心エコー図検査、ドブタミン負荷心エコー図検査)を行うこともあります。

検査

僧帽弁逆流症の治療

僧帽弁逆流症の治療としては、大きく以下の3種類があります。

  • 薬物治療
  • 開胸手術(弁の形成術または置換)
  • 経皮的僧帽弁形成術

薬物治療では、逆流を来たしている弁自体を直接治療できるわけではありません。外科手術は根治術ですが、高齢者や他に持病がある場合など、手術のリスクが高ければ実施が難しくなります。
僧帽弁逆流症に対し薬物療法を行っても治療が困難な場合、経皮的僧帽弁形成術が適応になります。臨床試験が済み確立した治療となっています。MitraClip システム用いて、閉鎖が不十分になっている僧帽弁をクリップで挟み込むことで逆流を制御しますが、開胸や人工心肺を必要としないので体への負担が少なく、手術リスクが高い方が主な治療対象となるのが特徴です。
病態、年齢、併存疾患などを考慮し治療法を決める必要があります。当院ではカテーテル専門医、心臓エコー専門医、心臓外科専門医、麻酔科医などで結成したハートチームにより十分議論し治療方針を決定しています。

経皮的僧帽弁形成術の実際

本治療は全身麻酔下でカテーテルを用いて僧帽弁をクリップで挟み込む治療法です。経食道心エコー、及びX線透視の併用が必須です。通常の治療時間は麻酔導入時間を含めて約2~3時間前後です。術後経過によりますが、多くは術後入院期間が3~4日程度です。
十分に僧帽弁の逆流を抑え、かつ過度の狭窄症を来たさずに治療が成功する可能性は80~90%程度と報告されていますが、本邦では90%以上の成功率があります。治療が成功すれば、薬剤治療のみで経過観察した場合と比較し、クリップによる経皮的僧帽弁形成術により生命予後および心不全入院イベント率が改善することが報告されています。

本治療は開胸手術による僧帽弁形成術、及び置換術と比較して逆流減量の効果は劣るものの、治療に伴う合併症の発生率は手術よりも少ないと報告されています。しかし、本治療において緊急外科手術、脳卒中、クリップ脱落、逆流再発、僧帽弁狭窄、腱索断裂といった合併症ないし不利益が生じる可能性があります。生命に関わるほどの重大な合併症が起きる頻度は、手術中から手術後30日以内で数%程度と報告されていますが、個々の患者様の状態により異なります。この点を十分に理解された上で本治療を受けられるかどうかを決定してください。
ハートチームにより術前検討を慎重に行い重大合併症の発生率が最小限になるよう、また生じた際には早急で最良の処置が行えるよう努めています。

経皮的僧帽弁形成術の実際

治療に関する相談

毎週水曜日午前中に弁膜症外来があります。また、ご都合が付かない際はその他の曜日でも診察・相談可能です。経カテーテル的大動脈弁留置術に関し不明な点や疑問点、あるいは心配な点がありましたら、いつでも担当医にご相談下さい。この治療は、通常の健康保険の範囲内で行われ、高額医療費制度が適応されます(その他の診察料や個々の内服薬の薬代、個室使用料などの費用は含まれません)。医療費の詳細につきましては医療事務職員にご相談ください。

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